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数学を話題に、学校教育を考えてみようと思っています。


by numacchi_01
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必修科目の未履修騒動

Yahoo!ニュース - 必修科目の履修漏れ問題 <履修不足>350回の補習も 不安渦巻く生徒たち

あっちこっちの高校で当たり前のように行われていたこととはいえ、これだけの大問題となると…困ったことです。
「学習指導要領に示されている事項」という原則と、「受験指導」という現状との乖離が引き起こした問題なのだろうと思います。

現実問題として、高校卒業のために必要な科目の履修は、高校が各学級に設定した時間割にしたがって生徒が授業を受けることで確実に履修されているというのが通常なのですが、そうはいっても高校としても、そこに通う生徒としても、その後の大学受験を考えると、3年間で受験に必要な科目を履修したほうが効率的。私立理系を受験する生徒は世界史はおそらく受験に使わないのではないでしょうか。男子も必修とされている家庭科も、受験に必要とされる科目ではないので、特に男子校では適当に夏休みの宿題できゅうりでも刻めば単位認定なんていううわさも聞いたことがあります。

今回の問題は、過去の卒業生の要望や現場の教職員の判断から出てきたものだと思いますが、きわめて合理的な考え方です。そのほうが受験では有利。より志望校に近づくわけだし、受験実績も上がる。これを中学校に置き換えれば、国・社・数・理・英さえやっていればいいということになります。公立高校の受験に必要な科目はこの5科だけですから。さらに極論をいけば国・数・英の3教科しかやらないということです。私立で3教科しか試験をしないところはいくらでもあります。実技の4教科は受験に必要とすることはほぼ、ない。しかし、学校教育がそれでいいのだろうかと思います。それじゃ学校に来て学ぶ意味はないのではないだろうか…。

受験勉強がしたければ予備校でも通信教育でも、生徒が必要だと思うものを生徒が選択して自ら学べばいい。放課後に自習して、職員室に質問を持ち込んだっていいと思うし。でも、学校で行う「進路指導」というのは何も大学受験指導ばかりでもない。就職をしようという高校生もいるし、一芸に秀でていて、留学を希望する生徒もいるでしょう。広く社会に出て社会人として通用する人間を養う、そのために様々な教養と人間性を養うところが学校であるはずです。

私が高校生だったとき、私の高校では1年生のとき生活一般(家庭科)を履修させていました。2年生のときには調理実習もしました。調理実習のために、わざわざプレハブの調理実習室を設置したのです。
当時の校長曰く、「卒業して大学に通うために一人暮らしを始めたとき、味噌汁も作れないのでは諸君らが困るだろう!」と。たしか2年の1学期の終業式だったと思います。2学期から本格的に行われる調理実習を意識した話だったのでしょうが、生きていく上で必要な知識・技能を修得することも重要なのだ、と強調していたのだと思います。現代社会と世界史Bも必修になっていました。少なくとも現代社会は受験に必要とされる可能性は低い科目だと思いますが、きちんと履修させていました。ただし、Oral Communicationなる英語の授業はあったかどうか……ReadingとGrammarしかなかったような気がする。英語については疎いのですが、卒業要件では問題にならない範疇なのだと思います、きっと。数学は……なんとなく授業時数が増やされていたような。

ともあれ、未履修科目は履修しなくてはならない。そのしわ寄せが一気に来てしまった多くの現高校3年生。もはや仕方ない、補修を行わざるを得ないのだろうけど、少なくとも履修科目が不足しているという事実に対して、生徒たちに責任はない。ただし、「受験に強い」からという理由で、そういう看板を掲げている学校を選択したという事実はあるのだろうし、その期待に応えるべく、良かれと思ってカリキュラムを組んでいった学校側であるのだろうけれど。
by numacchi_01 | 2006-10-28 10:24 | 教育